Bologna Children’s Book Fair 2016 レポート (3)

(前回からの続き)

(3)ブックフェア期間中の動きと、出展後の感想

ブックフェアが開催された4日間の自分の動きは以下のとおりです。

1日目……初日ということもあり、共同出展者2~3人と一緒に欧米の出版社を重点的に廻りました。事前にアポを取っていなかったため、アポなしでも持ち込みを受け付けてくれる出版社を探してポートフォリオを見てもらい、名刺交換できたのが3社でした。

2日目……ほぼ1人で、自分の展示ブースに近い中国・台湾・香港のブースを重点的に廻りました。展示ブースが目と鼻の先にあったということもあり、「すぐ そこなので、お時間があればぜひ見にいらしてください」と言ってチラシと名刺を渡し、ポートフォリオは無理に見せようとはしませんでした。(ゆとりがあり そうだったら見てもらいましたが) 中国語を話す外国人が珍しいということもあって、中国・台湾・香港の出版社ではまず「あなた中国語うまいね!」と笑いかけてもらえることが多く、そのおかげで割とリラックスして話せたような気はします。あと、欧米の出版社にも2社くらい持ち込んでみました。

3日目……すでに疲労感がたまっていたので「今日は絵本を買う日!」と位置付けて会場内の本屋で外国の絵本を購入。また、日本の有名な絵本作家の方が経営されている出版社のブースにポートフォリオを持って行って助言をいただいたりしました。

4日目……出版社は朝早くからブースの後片付けを始めるため、もう営業活動はしませんでした。午前中はホテルで名刺を整理し、どの出版社とどんな話をしたか、どんな反応だったかを一覧にまとめる作業をしました。午後2時には後片付けを開始し、30分で撤収完了しました。

こんな感じで、私の場合、自分から出版社へ出向いての営業活動はそれほど積極的とは言えなかったと思います。しかし、自身の展示ブースに来てくれた出版社 のいくつかには気に入ってもらえて話もできましたし、ブースに置いた名刺100枚は2日目で全て無くなったので、手応えがなかった訳ではありません。すぐに結果は出ないと思いますが、今回のフェアで種は蒔いたので、その中のいくつかがいつか実になれば良いなあという気持ちです。

 

とはいえ、反省すべき点も多くありましたし、本当に色々な事を学んだ4日間でした。

以下、ブックフェアを振り返っての感想をまとめてみました。

i. 出版社への持ち込み営業について

前回の記事で書いたとおり、私は事前に出版社へのアポ取りをしていなかったため、ブックフェア期間中に面談してもらえた企業はごくわずかでした。ブックフェアの初日はこの点を非常に悔やんだのですが、2日目3日目になると、逆に「アポ取りをしていても大差なかったかもしれない……」と思うようになりました。

それは主に、以下のような理由からです (あくまでも個人的な感想ですのであしからず)。

  • アポを取るべき出版社を事前に調べて判断することの難しさ
    ブックフェアには何百という出版社が出展しています。日本の書店でほぼ目にすることのない外国の絵本について、どの程度の下調べが可能だろうか……と考えると、自分で納得できるほどちゃんと下調べできる人は多くないと思います。
    また、若手のイラストレーターであれば、大手だけでなく中小規模の出版社へ売り込むのも堅実な方法だと思いますが、中小企業の場合ウェブサイトに英語のページがないことも多く、英語圏以外の国の出版社情報を集めるのは決して簡単ではないと思いました。
  • 大勢のイラストレーターの中で際立つことの難しさ
    ブックフェアには、ものすごい数のイラストレーターが売り込みに来ており、出版社はその対応で非常に忙しそうでした。つくづく思ったのは、何百ものポートフォリオをぶっ通しで見続けている編集者に印象を残すのは並大抵のことではない、ということです。
  • 自分の画風に合う出版社を見つけることの難しさ
    職業イラストレーターは、クライアントの要望に応えられるよう、多かれ少なかれ複数の画風を使い分けているものだと思います。そのため、「あなたの画風はウチの会社には合いませんね」と言われても、「じゃあこっちのタッチならどうですか!?」と聞きたくなってしまったり。(ポートフォリオにも複数の画風の作品を入れるのですが、それをやりすぎるとかえって印象に残らなくなってしまうというジレンマ。)
    もしかすると「今までになかった画風」を求めてるかもしれないし……どんな潜在需要があるかわからないし……と考え始めると、「自分の画風に合う出版社」をイラストレーター側で判断するのは本当に難しいと思います。

アポが取れるならもちろんそれに越したことはないですが、ブックフェアの2か月前にすでに予約でいっぱいになっている出版社も少なくないと聞きます。かけた労力の割りに、持ち込み営業で成果を出すのは非常に難しいのでは……という印象でした。

Bologna Children's Book Fair イラストレーターが売り込みチラシを貼れる掲示板

Bologna Children’s Book Fair会場の一角に設置された、イラストレーターが売り込みチラシを貼れる掲示板。
大勢のイラストレーターが競うように自分のチラシや名刺を貼ります。

ii. 展示形式での営業について

持ち込み営業と比べると、展示形式の営業は合理的で効率が良いと個人的には感じました。

第一に、展示ブースに足を運んでくれる人は、最初からイラストレーターを探そうという意思があるため割とじっくり見てくれますし、名刺やチラシなどを嫌がらずに受け取ってくれます。また、ブースを借りて展示をしているイラストレーターはまだそれほど多くないため、その点でもいくらか差別化ができるのではないかと。実際、出版社ブースにポートフォリオを持ち込んだ時には特段のコメントをくれなかったある編集者が、翌日展示を見て「Yukari MISHIMAとコンタクトを取りたい」とコメントをくれた、ということがありました。ポートフォリオを机の上で見るのと、大きめの展示パネルを壁面で眺めるのとではもしかすると印象が違ったのかもしれません。

名刺も、展示ブースに置いておけば興味のある人が持って行ってくれるので、今後依頼したい案件が発生した時に先方から連絡をくれる可能性はあります。持って行った名刺100枚は2日経たない内に全てなくなり、途中から名刺の代わりにチラシを渡す必要がありました。一方、もし展示なしで持ち込み営業のみを行った場合、100人以上の潜在顧客に名刺を渡すのは簡単ではなかったと思います。限られた時間内でできる限り多くの出版社へ売り込みたいと考えているイラストレーターにしてみれば、展示形式の「待ちの営業」と、持ち込みによる「攻めの営業」を同時進行で行えるのは、大変魅力的だと思いました。

2016年4月4~7日 Bologna Children’s Book Fair

複数のイラストレーターと共同出展した展示ブースの様子。

iii. 自分の作品のレベルや作風について

ここから先は売り込み云々ではなく、自分自身の気持ちの問題についてです。

今回、他のイラストレーターと1つのブースを借りて共同出展しましたが、さすがにレベルの高い方ばかりで、作品を並べてみた時にどうしても自分のレベルが低く感じられる、ということがありました。

私の場合、搬入した時点ですでに自信喪失気味だったのですが、ブックフェアが始まり、出版社へ持ち込み営業をする度に「ウチには合わないね」と言われたりノーコメントで返されたりということを繰り返すと、もう完全に気持ちが沈んでしまい、「そもそも私の絵柄は絵本向きじゃないんだ。私がここにいるのは場違いなんだ」とひたすらマイナス思考に陥ってしまいました。けれどもその共同出展者の皆さんと話をする内に、お互いに悩みを分かち合うことで少し気持ちが楽になりました。

今こうして冷静になってみると、「落ち込むならフェアが終わってからにすればいいのに」と自分でもちょっと呆れてしまいます。フェアの最中に落ち込んでしまうと、積極的な営業ができなくなり、限られた時間を無駄にしかねませんし。

とはいえ、そのように自分の作品について「本当に絵本向きなのか?」「どのようなジャンルなら良いのか?」とじっくり考えることは普段あまりなかったので、それはそれで良い機会だったかもしれません。

iv. 売り込みに必要なプレゼン能力について

一番大きな反省点は、せっかく面談をしてくれる出版社があっても、プレゼンの準備が十分でなかったために、満足のいく自己アピールができなかったことです。これは語学力だけの問題ではなく、イラストレーターの売り込みにプレゼンが必要である、という意識が自分自身に欠けていたことがそもそもの原因だったと思います。

私自身が、絵を見ている時に話しかけられると集中できなくなるタチということもあり、相手がポートフォリオを見終わるまで言葉を発せずじっと待っていたりしました。今思い返すと、「コイツ売り込みに来たくせになんのアピールもしないな」と思われていたかもしれません。相手は絵を鑑賞しているのではなく、ビジネスパートナーとしてのイラストレーターを探しているわけだから、自己アピールのプレゼンはあってしかるべきだったのだ、とブックフェアが終わった今は痛感しています。